ミステリアスなユージーン
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気になっていたカフェ。

インスタ映えするランチは心が踊るような色合いだ。

じっくり煮込まれたコンソメスープ、トマトパスタに水菜のサラダ。その上にはオレンジに近い濃い黄身が印象的なポーチドエッグがトッピングされていて。

本場である関西のとある町から直送されているアーモンドバターは、甘すぎなくてとても香ばしく、パンに塗ってトーストすると本当に絶品らしい。

リサーチしたところによると、噛むと同時にジュワッと口に広がる旨味は、思わず笑みがこぼれるレベルだとか。

そのアーモンドバタートーストを近いうちに食べたいと思っていた。

それが……それが、こんな形で叶うなんて。

私は真正面に座る人物を見つめて両手を膝で握りしめた。

「全く、なんなのよ」

ムッとして睨む私を一瞥したあと、佐渡君はツンと横を向いた。

「あれが瀬戸カナデ先生ですか」

「そうだけど」

「他の女性客には握手だけだったのに、どうしてあなたにはハグしたんですか?」

「私が先生を凄く好きで、何度もサイン会に行ってるからよ」

「……」

脚を組んで横を向いたその顔が、本当にモデルみたいだ。
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