ミステリアスなユージーン
切れ長の眼がゆっくりとこちらを見て、その焦点が私で定まってゆく。

胸がドキッとした。

切り込んだような二重瞼とりりしい眉が実に魅力的で怯みそうになる……けれども!負けていられるかっ!

私は不覚にもドキンとしてしまった自分を恥じつつ、こう言ってのけた。

「空間デザインの可能性って無限よ。そんな思考で挑むと、理解した気でいる自分の狭い可能性を恥じる事になるわよ。たった一週間でね」

言って唇を引き結ぶと私は佐渡君の眼を見つめた。

佐渡君は一瞬だけ瞳を丸くしてそんな私を見ていたけど、すぐに軽く頭を振ってサラリと前髪を揺らすと小さく咳払いをした。

「ほう……それはそれは……。ますますあなたに付いて勉強がしたくなりました」

ゆっくりと机に肘をつき、手の甲で精悍な頬を軽く支えた彼は、斜めから私を流すように見た。

「…………」

「さぞかし岩本さんのデザインする空間とやらは、見るものを魅了する無限の可能性を秘めてるんでしょうね」

「見るものを魅了?そんなの甘いわ」

私はグイッと彼に顔を近づけて、至近距離でニヤリと笑って見せた。

それから近付いた分、声を落として再び続ける。

「見る人だけじゃないわよ。私が作った空間に一歩入ったなら、その人に夢をあげるわ。たとえその人が涙していたとしても、私がデザインした空間にいる限り、幸せにしてあげるのよ。……じゃあ、資料どうもありがとう。また明日ね」
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