ミステリアスなユージーン
私は飛び起きると急いで佐渡君の後を追った。

「ちょっと待って、佐渡君……」

「最終項目……そんなユージーンが大好き……」

……手遅れだった。

ダッシュも虚しく、私がキッチンへと辿り着いた時には既に佐渡君が最終項目を読み上げてしまっていた。

ユージーンスペースを凝視し、佐渡君がポツンと呟くように私に問いかける。

「これは何ですか?」

「そ、れは……」

ど、どうしよう、訴えられたら。

だって密かに観察してたなんて、怖がられた挙げ句訴えられて、私の片想いは犯罪扱いだわ。

ああ!どうしようっ!

ところが滝のような汗を流して危機を感じる私とは対照的に、佐渡君は涼しげな声で私に問いかけた。

「ユージーンとはどこの誰です?」

え。

「今あなたが……恋をしている相手ですか?」

あれ。

……気付いてない……?……自分の事だって……。

……どうやら気付いていないみたいだ。

だって今、佐渡君はすごく真面目な顔をしているもの。

からかっているわけではないみたいだ。

私はコクンと喉を鳴らして、佐渡君の整った顔を見つめた。

どうしよう、ここはどう答えるのが正解?

……嫌われたくない。もうこれ以上、佐渡君に嫌われたくない。

なにも答えられないでいる私に、彼は小さく息をついた。

「……答えなくていいです」

言い終えて、瞳を伏せた横顔が綺麗だった。

「そんなの関係ないんで」
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