ミステリアスなユージーン
∴☆∴☆∴☆∴

週末。

「あっはははは!中二階アイドルの真中アンナ?!誰よ、それはっ!!」

沙織がゲラゲラと笑いながら、氷が一杯入ったハイボールのジョッキを持ち上げた。

今日は珍しく家飲みではなく、会社の近くの居酒屋だ。

店内は漁船をモチーフにした内装で、ライティングは透明感のあるレモン色だ。

私はお刺身を口に運び、味わった後眉を寄せた。

「だから、真中アンナだっつってるじゃん!彼女の歌聴きながら縦揺れしてたんだよ?!殆どトランス状態だよ、あれは!しかも会場のど真ん中で!よっぽどのファンだよね」

沙織は素早くスマホを操作して真中アンナを検索し、ほぉー……と一言、言葉を発した。

「ね?爆乳でしょ?!」

「ほんとだね、こんな胸がいいんだ、彼!誰かとは大違いだわ」

「こら!なんかちょっと悪意を感じた!」

「あははははは!で、いつ結婚すんの?」

「はあっ?!」

私は持ち上げたばかりのジョッキを下ろし、首をかしげて沙織を見た。

「あんたまで変になっちゃったの?!付き合ったばっかだよ?!結婚なんて考えてないよ!」

「けどユージーンはイギリスのSAグループ勤務なんでしょ?!半年で戻っちゃうんじゃないの?」

「実は……詳しいことは全然知らないんだよね。付き合ってすぐそういうのって訊きにくいし」
< 150 / 165 >

この作品をシェア

pagetop