ミステリアスなユージーン
「BLだったら何でもいいんじゃないからね!?瀬戸カナデ先生が描くBLが好きなの、私は。あのね先生のBL漫画の男はめちゃくちゃカッコいいの。そこいらの生身の男の百倍はイイ男なのよ」

「ハイハイ」

「いやいやホントだよ?今度家飲みの時に貸してあげるから!あのね瀬戸カナデ先生の描く男はね、今までに私が付き合ってきた男より断然、」

「フッ」

んっ?!

フッ?……なに今の。

そう思ったのはほんの一瞬だけで、私は後ろを通った人物が佐渡君だとすぐに分かった。

「ここ、いいですか?」

艶やかに響いたこの声で。

途端にパアッと沙織の顔が輝く。

「どうぞ。佐渡さん……ですよね、菜月と同じ課の」

そう言った沙織に、佐渡君は優雅に微笑んだ。

「初めまして。岩本さんの下で勉強させていただく事になりました、佐渡右仁です」

「わたし、菜月と同期で受付やってる川島沙織です」

続けて佐渡君が沙織に言葉を返す。

「お名前を伺えて光栄です。岩本さんと同期とは思えないほどお若く見えますね」

な、なんですって?!

なんでわざわざ私を引き合いに出すのよっ!

ランチのトレーをテーブルにおき、右隣に腰を下ろした佐渡君を私は睨んだ。

「やだー、佐渡さんってお上手!」

どこがじゃ!
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