ミステリアスなユージーン
今度は喜ぶ沙織を刺すように見つめる。

「ゆっくりお話したかったけど残念!私もう行かなきゃ。じゃあね、菜月。佐渡さんごゆっくり」

微笑んで少し頭を下げた佐渡君を見たあと、沙織は私を意味ありげに見て去っていった。

「……いただきます」

「えっ?」

何をいただくのかと思わず佐渡君を見た私を、彼は訝しげに見た。

「昼食ですが」

あっ。

物凄く自分が間抜けで恥ずかしかったから、私はそれをごまかすかのように微笑んだ。

「Aランチ美味しかったわよ」

「これはBランチです」

「っ……」

もうっ、なんなのよ、噛み合わないわね!

「漫画が好きなんですか」

……やっぱ聞いてて鼻で笑ったんだ。

佐渡君は淡々とそう言ってお味噌汁を手に取った。

「二次元の男の方が現実世界の男よりいいですか」

チラリとこちらを見た彼の端正の顔が、私を小バカにしたように思えた。

「今までロクな男と出逢わなかったんですね、お気の毒に」

チッ!クソッ!

「 私はずっといい恋愛してきてます、ご心配なく。
……あのね、そういう事じゃないのよ。瀬戸カナデ先生の描く男が、世界トップレベルだっつー話なのよ」

「フッ」

……こいつめ。
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