ミステリアスなユージーン
「そう!」

意気揚々と答えた私を沙織は鼻で笑った。

「そんなの彼を見りゃ誰でも分かるわよ。スラリとした長身に男らしい顔立ち。ああ、私もあんたと同じSD課に移動届出そうかなあ!」

私は冷や汗の出る思いで彼女を見つめた。

……あんた先週は確か、営業部の谷村さんが素敵!とか言ってなかった?!

変わり身の早さにビックリするわ。

「それに営業部長の島根さんはどうしたのよ」

すると沙織はシラーッとした顔で、

「私ほどの美女を受付嬢にするのは会社として当然の選択よね。来客のオッサンには大好きな野球観戦の優待券貰いまくりだしイケメンには食事に誘われるし受付嬢は最高よ。でも私ももう三十だしさ。そろそろ旦那でも探そうかな、なんてね」

「……ユージーンでいいの?!アイツ変だよ?!」

「だから詳しく教えてよ。どこがどう変なのか」

私は素早く冷蔵庫の扉を開けて缶ビールを取り出すと沙織の腕を掴み、狭いリビングへと引き返した。

それから二人して定位置に座ると、ローテーブルに乱雑に置かれたツマミを手にする。

「まだユージーンがSD課に来て一週間だけどさ、とにかく変わってるの!聞きたい?!」

大袈裟に眉を寄せて低い声を出した私に、沙織は見事に食いついてきた。

「うん、聞きたい聞きたい!」

そんな沙織に、私は内心ほくそ笑んだ。
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