ミステリアスなユージーン
ニコニコして彼を見つめると、やがて我に返った佐渡君は食べながらその合間に言った。

「趣味は……舞台観賞です」

「えっ、どんな?」

驚いて眉を上げる私を眼の端にとめて、佐渡君は短く答えた。

「……色々です」

「もしかして、オペラとか?」

私の問いに、佐渡君は僅かに視線をさ迷わせた。

「そうですね。オペラやミュージカル、ああ、能も好きだな……芸術性の高い物が好みです」

……私の想像の遥か上の回答ではないか。

佐渡君は、ポカンとして見つめる私に唇の端を上げて笑い、

「……まあ『漫画』などと言って、二次元の男に入れあげてる!岩本さんには俺の高尚な趣味は理解できないでしょうが」

……入れあげてるって……凄い悪意を感じる言い回しだわ。

内心イラッとしながらも私は微笑んだ。

「けど佐渡君も漫画に出てきそうだよ?ビジュアルだけ良くて、中身が最低最悪な恋敵役とか」

あはははっ、言ってやったわっ!

案の定、佐渡君は悔しそうな表情を浮かべつつも、プライドからなのか静かな口調で、

「そうですか。御馳走様でした」

「お粗末でした」

「岩本さんに言ってません」

チッ!いちいち可愛くない!
< 20 / 165 >

この作品をシェア

pagetop