ミステリアスなユージーン
可愛くないけど……お箸を置き、両手を合わせて少し顔を伏せた佐渡君の横顔は素敵だと思った。

ああ、ビジュアルは本当に私のドストライクだ。

漆黒の柔らかそうな髪と、少し反った睫毛、低くないけど高すぎない形のよい鼻。

綺麗だなあ……。

「そんなに見つめてもダメですよ」

佐渡君のその声にハッとして、私はパチッと瞬きをした。

すると佐渡君は、私の心を見透かしたかのように妖艶な笑みを浮かべて、流すようにこちらを見た。

その眼差しに、不覚にも心拍が上がる。

そんな私に佐渡君が再び口を開く。

「随分見惚れてますけど、くれぐれも俺をオトそうとか考えないで下さいよ。俺、何の取り柄もないアラサーなんか興味ないんで」

何の取り柄もないアラサー!!

何の取り柄もないアラサー!!

ぶっ殺すぞテメー!

こ、こんな言葉で私の嫌みに対して復讐を遂げようとしてくるとは!

悪役令嬢の男版……悪役令息かコイツはっ!

未だかつて、こんな無礼な男がいただろうか。

いや、いない。
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