ミステリアスなユージーン
怒りからかショックからかは定かでないが、手がアル中みたいに震えるわ!

それを抑えるように脳細胞全てに指令を出すと、私は口を開いた。

「私、彼氏いるから安心して。それにいくらビジュアルがドストライクでも佐渡君を好きになる日なんか百万年生きれたとしても来ないから大丈夫だよ。あ、そうだ。午後から私はディスプレイの小物のチェックに行かなきゃならないから仙道君についてね。じゃあね」

足の指全部にグッと力を入れ、私は立ち上がると社食を出た。

人差し指が逆に曲がりそうなほどの力を込めてエレベーターのボタンを押と、胸のムカつきを抑えようとギュッと両目を閉じる。

……何の取り柄もないアラサーだと?

何の取り柄もないなんて、なんでお前に分かるのよっ!

エレベーターに乗り込み、SD課のオフィスがある5階を目指すと私は口に出して毒ついた。

「ビジュアルよけりゃ多少の性格の悪さは見逃せるけど、あれはヤバいレベルじゃない?」

……口に出すまでもないわ。あれは性格悪すぎ!てゆーか、私に意地悪なら、恋愛対象外よ。

やがてゆっくりと扉が開く。

私は完全にそれが開ききったのを確認すると、ゆっくりと一歩踏み出した。

さあ、仕事仕事!

脳内から佐渡右仁をドカッと蹴り出し、私は大きく息を吸い込んだ。
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