ミステリアスなユージーン
∴☆∴☆∴☆∴

土曜日、午後七時。

「岩本さん!」

待ち合わせの居酒屋にあと数メートルというところで、店の前でこちらに手を振る安藤君が見えた。

場所は駅に近い繁華街で、土曜日だからか人で溢れている。

「迷わなかったですか?岩本さん、とてつもなく方向音痴だから」

……まあ確かに方向音痴だけど。

「言われた通り、スマホのナビ機能で住所いれたら連れてきてくれましたよ」

私が少し睨んで笑うと、安藤くんはポッと顔を赤くして私を見下ろした。

「今日の服……可愛いですね。いつもはパンツスタイルだから……スカートってなんか新鮮というか」

「嬉しいけど、安藤君みたいに若くて素敵な男の子に褒められたら照れ臭いなあ」

私がこう言いながら背の高い安藤君を見上げると、彼は少し笑みを消しながら真剣な眼差しで私を見つめた。

「……凄く可愛いです、岩本さん」

「ありがと!安藤くん!」

私がニッコリ笑うと安藤君は、

「今さっき佐渡さんも着いたところです。新庄課長がまだなので、僕は後で入ります。どうぞ」

「ありがと。じゃあお先に」

安藤君の開けてくれた引き戸から中に入ると、

「まあ、いつもの男みたいなファッションよりはいいんじゃないですか?安藤君が惑わされるのも頷けます」

「うわっ」
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