ミステリアスなユージーン
引き戸越しにさっきの会話を聞いていたらしい佐渡君のこの言葉に、私はビクッとして思わず声をあげた。

「ビックリするじゃん!何してんのっ!」

そんな私を一瞥し、彼は淡々と続けた。

「店に入ってすぐにメールがきたから返信してたんです」

あっそ。

そんな佐渡君は厚手のマルチボーダーの七分袖のシャツと、ツイルチノパンツというスタイルで、とても良く似合っていた。

上下ともにダークカラーで、シャツに関してはVネックが彼の首と肩幅を強調していてとてもセクシーだ。

ダメだ、やっぱりカッコイイ。

またしても見とれそうになったところで私はハッと我に返った。

ダメ!一秒以上はもう絶対見つめない!

その時、カラッと再び戸の開く音がした。

「いらっしゃいませ!」

私たちを案内しに来た店員さんがニッコリと笑顔を向けた時、

「おお、岩本」

安藤君と新庄課長が中に入ってきた。

「じゃ、僕先に行ってます」

安藤君が私達の脇を通って予約している席へと姿を消し、私と佐渡君は新庄課長に頭を下げて挨拶をした。

「課長、こんばんは」

「ん」

アッと思った。

そんな私を眼で捉え、課長が優しく頷く。

……なんだか嬉しい。

だって課長の手首に、私がプレゼントした時計がしてあったから。
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