ミステリアスなユージーン
「……」

課長の眼が誘っている。

……歓迎会の後、どうかと。

課長の茶色い瞳に頷こうとした時、

「行きましょう、課長」

「ああ」

佐渡君に促されて課長が歩き出した。

それにつられるように私も後に続く。

「いらっしゃいませ!」

店の奥へ入るにつれて、活気付いた声と料理の良い香りを感じ、私は立派な梁の見える天井を見上げた。

「改めて言いますが……良い感じです」

少し振り返って佐渡君がこう言ったから私も頷いた。

「うん、とても高級感があって落ち着ける内装だよね。お料理が楽しみ」

言い終わった途端、佐渡君が少し眉を寄せた。

「店の話じゃなくて岩本さんの今日のファッションを褒めてるんです」

え?

「いつもよりかなり若く見えます」

「それは……どうも」

……なんだ、どうしたんだ、コイツは。

何か裏があるのかと訝しげに佐渡君を見つめると、彼はツンと前を向いてしまった。

「……」

なんだか分からないけど、まあいいや。お腹すいたし。

私はSD課の面々が既に集まっている個室に上がると、みんなと笑顔を交わした。
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