ミステリアスなユージーン
「お前のチームに入れたい奴がいるんだ」

「えーっ!課長、うちのチーム多忙につき新人育てる余裕なんてないですよ」

私がそう言うと、課長はあからさまに眉間にシワを寄せた。

「アホか。新人育てるのも仕事のうちだろーが!」

ちぇ。

言い合いが終わり、私たちはお互いの顔を見つめた。
 
オフィスでは普段、私と課長に甘さなんて全くない。

あるのは上司と部下としての、サバサバとした空気のみ。

でも、社外での課長は蕩けそうな程甘い。

通った鼻筋、清潔そうな口許。

……課長、今晩会いたい。

瞳に思いを込めた瞬間、突然課長が今までの真顔を崩した。

私が眼を見張るなか、その顔に優しい笑みを浮かべて課長が頷く。

……嬉しい。

ダメ。やっぱり課長はカッコイイ。

私は観念して再び席につくとおとなしくオフィスで待機した。

∴☆∴☆∴☆∴

「佐渡右仁と申します。株式会社アリシア工藝のSD課で皆様と働けることを大変嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いします」

……フレッシュさが全くないんですけど。

私はSD課に配属された十人の新入社員のうち、最後に自己紹介をした佐渡右仁を穴の開くほど見つめた。
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