ミステリアスなユージーン
ニコリともせず淡々とこう言った彼の声は低くて艶やかだ。

それから、背が高くて八頭身以上かと思うほどに眼を引く体型。

その上シャープな顔立ちは、どこかエキゾチックで神秘的だ。

なに、この美形は。

「佐渡はわが社の契約会社であるイギリスのSAグループから派遣されてきた。専門はブランディングだがこの度は半年間、SD課で空間創造のノウハウを学んでもらう事となった。岩本菜月、お前のチームで面倒みてやってくれ」

私は課長に名前を呼ばれ、小さく返事をして一歩前へ出た。

「ちなみに佐渡は最近の日本にあまり馴染みがない。みんな仲良くしてやってくれ。新入社員歓迎会の幹事!いいとこ予約してやれよ」

課長の言葉に入社二年目の安藤君が元気よく返事をした。

「抜かりはないですよ、課長!」

その時、ふと視線を感じて顔を上げると佐渡右仁が私を見下ろしていた。

その彼の表情に、不覚にも緊張する。

ちょっとなによ。その値踏みするような眼差しは。

「岩本菜月さん、お世話になります」

「……こちらこそ」

これが、佐渡右仁と私、岩本菜月が初めて交わした会話だった。
< 5 / 165 >

この作品をシェア

pagetop