ミステリアスなユージーン
……何が言いたくて課長はここで私を待っていたのだろう。

言い訳をして私を納得させ、自身の罪悪感を消すため?

それとも私に愛を乞い、関係を続ける為?

分からない。でも、もうどうでもいい。

私は課長の眼を見ると、きっぱりと告げた。

「課長。私、近々結婚する男に興味なんかありませんよ?」

お休みなさいと小さく頭を下げた私の腕を課長が掴んだ。

「佐渡が本気で好きなのか?!」

「……課長よりは」

お互いに口を閉じた私達は、探り合うように視線を絡ませた。

やがて課長が諦めたように笑う。

「キツいぞ、それ」

「課長。ご婚約おめでとうございます」

一瞬、課長がグッと顔を歪めたけど、私は直ぐに踵を返した。

だって、振り向かないと決めたから。
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