ミステリアスなユージーン
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数日後。

「佐渡君、グラフィック確認して。すこしでも画と違うと思ったら教えて。それとオーナー様との待ち合わせ時間もうすぐだからね」

今日は子供服のお店『Seven colors』の引き渡し日だ。

「……ちょっと待ってください。あそこ、人形の靴が脱げそうになってますけど」

「え?うわ、ほんとだ」

天井からワイヤーで吊り下げている人形の靴が片方脱げそうになっていて、踵が見えている。

「マジックテープがしっかり止まってなかったみたいだね。仙道くん、脚立……」

「もういませんよ。道具も全て車に積みました。午後から別行動ですから」

「あ、そうだったね。ちょっと、椅子ない?」

「あそこの椅子はもう固定済みです」

「じゃあパイプ椅子とか」

「ありません。施工業者も帰りました」

「えー……」

どうしたものかと一瞬眉を寄せたけど、私は直ぐに佐渡君を上から下まで眺め回した。

……佐渡君ならいけそうじゃん。長身じゃん。

「ねえ佐渡君、届かない?やってみて」

佐渡君はタブレットを置くと、私を見て首を振った。

「ワイヤーの長さと人形の背丈、部屋の高さを確認すると、靴までは230センチはあります。俺が手を伸ばして指先がギリです。靴を掴んで履かせるのは無理ですね」

「……」
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