ミステリアスなユージーン
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「なあ菜月、いつになったら名前で呼んでくれるんだ」

「……和哉って?なんか違和感半端ない」

「やることやってんだしお互いに未婚なんだ。俺達は堂々と恋人同士だと言える仲だろ?」

薄いシーツに身を包んだ私を後ろから抱き締めて、新庄課長は軽くため息をついた。

新庄和哉。三十歳。

私と同い年だが、管理職。

それからこの男は本気の俺様男だ。

これはあくまでも私の持論だけれど、女が惚れる俺様は実は名ばかりの『なんちゃって俺様』だ。

普段の態度や行動は傍若無人のように見えるが、実はそういう部分を出すのは当たり障りのない場のみで、ここぞという場面では女子の要求を全面的に受け入れ、深い愛情で甘やかす系。

だが、この新庄和哉はそうじゃない。

ただただ己の欲求のために私を傍に置いている正真正銘の俺様なのだ。

甘い眼差しも言葉も、自分がそうしたい時だけ。

私を抱く時のあの仕草も。

彼との間に未来はない。

それは新庄和哉がこの株式会社アリシア工藝の社長の甥であり、親交を深めたい取引会社のご令嬢と将来的に結婚する予定だからだ。
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