ミステリアスなユージーン
ただ相手がまだ未成年のため交際はしておらず、家同士の話し合いの結果、婚約するまでは互いの人生に干渉しないという約束なのだそうだ。

課長はその事実を私に隠さなかった。

『理解してくれるなら婚約までの間、お前を俺のものにしておきたい』

今の私に結婚願望はない。

私にとって一番大切なものは仕事。

結婚や育児で今まで培ってきたキャリアを棒に振りたくないのだ。

でも課長の事は好きだった。

深くなくていい。そのカッコイイ顔と身体で私を満足させてくれるなら、それでいいのだ。

新庄和哉という男の心は欲しくない。私はそこまでは求めていない。

こんな考えを持っている自分はいつの間にかピュアじゃなくなってしまって悲しいけれど、三十にもなって心がなきゃ寝たくないとか言ってたらいつまでもセックス出来ない。

……ダメ。自分でもひくわ。

「んな事言って、俺が婚約しても泣くなよ」

私は身体に回る課長の腕をほどきながら、アハハと笑った。

「課長こそ、私に恋人が出来ても取り乱したりしないでくださいよ」

「菜月」

シーツを巻き付けたままベッドから降りた私を課長が低い声で呼んだ。
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