ライトブルーの香りは今でも







今日は自己紹介と
テスト返しで学校は終わるはず。




次の時間は数学…、か。

あの先生じゃ有りませんように。







『え、ラッキー!リョウちゃん担当じゃん』

『よっしゃ、数学頑張れそう!』









最悪だ、予感はしていたけれど
こうも当たるとは…。



二組の数学担当は茶髪先生がするらしい。






しかも、服装がジャージ。

部活だけの服装じゃないみたい。







周りの男子や女子はとても喜んでいる。






それもそのはず、彼はたった一日で
学校の人気者になったらしい。



私も昨日の帰宅途中、散々噂を聞いた。






『カッコイイ』『イケメン』『超絶タイプ』





主にこの三つだけど、かなりの有名人に成長している。




先生も満更でもない顔で『座れ』と支持を促している。







涼「お気付きのように俺が此処の数学を担当する事になりました、飯塚涼です」





軽い自己紹介をして昨日も見たあの柔らかな笑顔を生徒に見せる。




教室の女子は花が咲いた様に色付いていた。



この教室は完全に
茶髪先生のペースになっている。







涼「はーい、昨日のテスト返すぞーい」






え、何。

今の『ぞーい』は何?





茶髪先生の一語一句に女子は心弾ませていた。



…先が思いやられる。





次々と返しているがペースが遅い。



先生の方を見てみると教卓の所で何か話していた。




ボディタッチの激しい女子や
納得した顔の男子が見える。






涼「川崎夏実〜」



夏実「はい」






昨日の事は無かった様に
返事をしてテストを取りに行く。





すると何も言わず、テストも渡さず、私の顔を
じーっと見てくる茶髪先生。




私も何も言わず目を逸らし、
テストを受け取るために腕を伸ばす。





涼「眼鏡ちゃん、握手〜」




夏実「なっ、!」







私の事を覚えていた様で『眼鏡ちゃん』という
認めていない渾名を口にして手を握って来た。



どういうつもりなんだ、この教師。





私は慌てて手を引っこ抜いた。


教卓なので勿論、クラスの女子は私達を
見ていた。





『何あの子、図々しい』

『頭がいいからって調子乗ってんのかな』





嗚呼、二年生でもか。



一年生の時から友達も出来ず、
ひたすら写真と勉強に時間を費やしてきた。





直接苛められた訳では無いけれど
テストでは陰口の様なことを言われ、
行事ではパシリの様な扱いをされてきた。







「先生、私とも握手〜!」



涼「テスト返し終わったらなぁ」






先生のこの一言でまた教室は
満開の花で溢れていた。





私は満開の花の中、テストを返してもらい
点数を見た。



63点




最悪だ、数学以外は90点くらい取れていたのに
いつもいつもこの教科だけは上がらない。



一番良くても85点だった。






目標の100点までは程遠い道だな…。



間違えた箇所を見ていると少しずつやり方が
書いてあった。






夏実「…意外と字が綺麗で分かりやすい」






わかりやすい解説と綺麗な字。





当たり前の事かも知れないけれど、
文字だけで出来なかった問題を理解した私は
少しだけ先生に関心を持った。






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