キミは甘のじゃく

「お父さんは継がせんの一点張り。かたや眞琴は継いでやるの一点張りでね。それからずーっと平行線の一途を辿っているのよ」

あの二人が譲りあいの精神を持ち合わせているとは思えず、話し合いが難航することは想像に難くない。

「結婚の話もね。そう言えば眞琴が諦めるかもって期待してのことだったんでしょうね。まさか本当に相手を連れてくるとは思わなかったみたいだけど」

ある意味すごい……。

私って本当に単なる意地の張り合いに巻き込まれたってこと?

「おじいさんはどうしてそこまでして……古賀くんを拒むんですか?」

「古賀電機にはかつてのような輝きはもうないの。国内の家電メーカーは海外生産の低価格品に押されて軒並み業績が伸び悩んでいるし……。お父さんなりに眞琴に尻拭いをさせるのは忍びないって思っているのかもね」

……古賀くんが自分の会社の業績のことを知らないはずがない。

きっと、彼はそれを含めた上で古賀電機を継ぐことを覚悟しているのだ。

孫の心、祖父知らず。

そしてまた、祖父の心を孫は知らないのである。

「頑固なんですね。ふたりとも……」

「互いに大事に想っているものは同じなのにどうしてこうもすれ違うのかしらね」

父と息子の間で板挟みにあっているお義母様は苦笑したのだった。

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