キミは甘のじゃく
15.死亡フラグが立ちました
おじいさんが緊急入院したと一報が入ったのは、最高気温36度を記録した暑い夏の日のことだった。
古賀くんから連絡を受け、会社を早退してお見舞いに駆け付けると病室から怒鳴り声が聞こえてきて、入るのをためらってしまう。
「だーかーらー!!こうなる前に俺にやらせてくれって言ってんだろう!?」
「お前には任せられんと何度も言ってるだろう!?」
「じいさんの言った通り結婚もしただろうが!!これ以上何が不満なんだよ!!」
うわ……。すごい声。
VIP仕様の個室とはいえ、ここまで大きな声ならば他の患者にも聞こえてしまうのではないかとオロオロしてしまう。
怒鳴り声が止む気配はなく、病室に入るタイミングを完全に見失っていると……。
「あら、さくらちゃんも来てくれたの?」
花瓶に水を注ぎにいっていたと思しき、義母様と遭遇した。
「あの……」
なぜ私が病室の前で突っ立ったままなのか理由に気がついたのか、お義母様がふふふと微笑んだ。
「ああ、気にしないで。あの二人はいつもこうなのよ」
いつもこうってことは、結婚の挨拶に行った時に大人しかったのは互いにけん制し合っていたということか……。