キミは甘のじゃく
3.古賀眞琴
古賀くん――“古賀眞琴”くんと私は中学校のクラスメイトである。
古賀くんは成績優秀な上にスポーツ万能、それでいて大の大人も手を焼くしたたかさを持っていた。
学生のうちというのは往々にして大人が勝手に作ったルールや都合というやつに振り回されがちだが、古賀くんは違う。
納得いかなければ教師だろうが年上の高校生だろうが、構わず食って掛かり、大人顔負けの論舌と腕っぷしを発揮した。
誰にも物怖じしない彼の態度は他のクラスメイトからは頼もしく、好ましく映ったのだろう。
古賀くんの周りには男女問わず常に何人かの取巻きがいたと記憶している。
クラスのリーダー的存在であった古賀くんに対して私はというと、ごくごく普通、十把一絡げの地味な女子生徒だった。
ヒエラルヒーが異なれば、価値観も友人も異なる。
唯一の共通点と言えば同じ教室にいたことくらいだろうか。
……遠巻きに見ることはあっても、触れ合える距離には決して近づかない。
暗黙のルールが破られたきっかけが何だったのかも、もう覚えていない。
いつの頃からだろう。
“口答えするなんて生意気なんだよ”
……古賀くんが何かにつけてちょっかいをかけてくるようになったのは。