キミは甘のじゃく
この場を制するように、おじいさんがパンッと掌を叩いた。
「……言いたいことはそれだけか?」
言い残したことはないかと冷静に確認するような問いかけは、おじいさんの懐の深さを窺わせた。
……他人のことばかり言えない。
かあっと頭に血が上っていたのは、私も同じである。
(また余計なお世話を……!!)
私ごときが偉そうにお説教なんて……。
しかも、相手は病人だというのに!!
「す……すみませんでした!!」
一呼吸遅れて口から出たのは、謝罪の言葉だった。
(し……死んだ……!!社会的に死んだ!!)
おじいさん――よりにもよって古賀電機の会長に口答えするなんて!!
「わ……たし……帰ります!!」
恥ずかしさのあまり居たたまれなくなって、しどろもどろになって病室から飛び出す。
(や……やっちゃった……!!)
うう、ごめんね。古賀くん……。
私が余計なことを言ったせいで、おじいさんの機嫌を損ねてしまった。
古賀くんの長年の夢が叶わないかもしれない。せっかくの努力も水の泡になるかも。