キミは甘のじゃく


同窓会の会場は洗練されたオシャレな街にある小洒落たレストランだった。

立食形式で行われ、席は固定ではなく自由だった。

誰とでも気兼ねなく話せるようにと配慮されたものらしい。

「それでは梅が丘中学校3年A組の再会を祝しまして、乾杯!!」

皆で唱和してグラスを掲げドリンクを飲み干すと、どこからともなくパチパチと拍手が沸き上がる。

乾杯の音頭を取ったのは幹事のしいちゃんではなく、元クラス委員長だった男の子だ。

同窓会がスタートしてまもなく仲の良いグループごとに各々テーブルに固まりだす。

これなら、大人しくしていれば古賀くんとの関係はバレそうにない。

……問題は、古賀くんが大人しくしてくれるかどうかである。

「あれ?古賀は?」

出し抜けに古賀くんの名前を聞いて、ついビクッと耳が反応してしまう。

「わかんねー。あとから来るんじゃねえの?」

かつての取巻き達は何事もなく、私の後ろを横切っていった。

(遅れてくるって言ってたもんな)

例のタラシの木橋さんから、緊急で連絡が入ったのは今朝のことだった。

(……長引いてくれればいいのに)

私の思いとは裏腹に、そうは問屋が卸さないのが人生の悲しいところである。

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