キミは甘のじゃく
「さくら」
「はい?」
名前を呼ばれてつい反射的に返事をすると、なぜか友人達がしーんと静まり返った。
(え、何?この雰囲気……)
……嫌な予感しかしない。
「悪いけどこいつは二次会には行かせられない。酔っ払うとどこでもすぐ寝るからな」
身動きがとれないように私の首を背後から左腕でロックした状態での発言である。
「こ、が、くん……」
「お前もはっきり断れよ。もう、結婚してるから他に男は要りませんってな」
古賀くんは私の左手を取り、薬指に輝く指輪にチュッと口づけた。
約束通り“誰と”結婚しているかは明言していないが、相手が“誰か”ははっきりと匂わせている。
こんなことをしている時点で、相手は自分だって言っているようなものじゃない……。
違反スレスレというか、完全にアウトである。
「マジで?」
「冗談だろう……?」
「青山?何であいつ?」
会場は一種のパニック状態に陥る。
……当然だ。
金の卵、未完の大器、将来の大物として活躍する彼が、私のような平々凡々な女と結婚したなんてある意味大スキャンダルである。