キミは甘のじゃく
**********
「早くしろよ。ホントにグズだな」
古賀くんの罵る声が聞こえたような気がして、ハッと目を覚ます。
目を覚ましても古賀くんの姿はどこにも見当たらず、あれが空耳だったとわかる。
(やだなあ……)
どうやらリビングのテーブルに突っ伏してすっかりうたた寝をしていたようだ。
(ここのところ、夢見が悪すぎる……)
昔のことばかり思い出しては、切ない痛みに呻き苦しんでいる。
時計を見ると時刻は既に夜の6時を過ぎている。
そろそろ夕飯の支度をしなくてはと、重い腰を上げたその時、パッと周囲が明るくなった。
「どうした?明かりも点けずに……」
「ううん。何でもない」
照明をつけてくれたのは帰宅した古賀くんだった。
「今日は随分早く帰ってきたのね」
同窓会以来、互いを避けるように過ごしていたから……もう、私のことは用済みなのかと思っていた。