キミは甘のじゃく

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「早くしろよ。ホントにグズだな」

古賀くんの罵る声が聞こえたような気がして、ハッと目を覚ます。

目を覚ましても古賀くんの姿はどこにも見当たらず、あれが空耳だったとわかる。

(やだなあ……)

どうやらリビングのテーブルに突っ伏してすっかりうたた寝をしていたようだ。

(ここのところ、夢見が悪すぎる……)

昔のことばかり思い出しては、切ない痛みに呻き苦しんでいる。

時計を見ると時刻は既に夜の6時を過ぎている。

そろそろ夕飯の支度をしなくてはと、重い腰を上げたその時、パッと周囲が明るくなった。

「どうした?明かりも点けずに……」

「ううん。何でもない」

照明をつけてくれたのは帰宅した古賀くんだった。

「今日は随分早く帰ってきたのね」

同窓会以来、互いを避けるように過ごしていたから……もう、私のことは用済みなのかと思っていた。

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