キミは甘のじゃく
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『今日は早く帰るな』
『うん、分かった』
……という会話を交わしたのは今朝のこと。
壁掛け時計の秒針の音ばかりが響くリビングで、私は古賀くんの帰りをひたすら待っていた。
(遅いな……)
早く帰ってくると言っていたから、食べずに待っているのにもう10時を過ぎている。
遅くなるなら連絡くらいくれればいいのに……。
せっかく作った夕飯も冷めちゃったし、お腹も空いたよ……。
きゅうっと鳴るお腹を押さえ空腹に耐えていると、ガチャガチャと玄関の鍵が開く音が聞こえた。
(帰ってきた……!!)
やっとご飯が食べられると、喜び勇んでパタパタとお出迎えにひた走る。
「おかえ……」
「さくら……っ!!」
「ん――っ!?」
帰ってくるなり古賀くんは私に抱き付き、ひどくお酒臭いキスを無理やりしてきた。
「ただいま……」
クククっと赤ら顔で不敵に笑うその顔は、どこか目の焦点が合っていない。
足元もおぼつかず、あっちにふらふら。こっちにふらふら。
その度に彼を支える私は左右に振り回される。
お酒を飲んでも飲まれることはない古賀くんが、ここまで酔ってハイテンションになるなんて心配になる。