キミは甘のじゃく
10年以上の月日が流れ、古賀くんには年相応の落ち着きとスマートな振る舞いが身に着いたのだろう。
それなのに私ときたら頭の中身が中学生の頃と進歩していない。
かつてのいじめっ子に再会しただけで、こんなに動揺するなんて……。
(平常心……平常心……)
仲居さんが濡れた食器や箸を片づけている間も念じ続けていると、ふとどこからか鋭い視線を感じた。
思わず顔を上げると古賀くんとバチリと目が合ってしまう。
“このドジ、グズ、マヌケ”
呆れかえった顔をしている彼の言わんとしていることが幻聴のように聞こえてきた。
……前言撤回。
古賀くんも社交辞令や世間体を身に着けただけで中身は全く変わってない!!
(……今すぐ帰りたい)
泣き言なんて言いたくないのに、ただあの静かな目で見つめられると萎縮してしまう。
お見合いの相手が古賀くんだって知っていたら絶対に来なかったのに……!!