キミは甘のじゃく
『さくら……綺麗だ……』
なんて言われてしまった日には……。
想像するだけで、頭からボンッと壊れた機械のような黒い煙が出てくる。
(言うわけないよね……。古賀くんだもの……)
平常時の古賀くんに甘い台詞を期待するだけ無駄というもの。
大人しくパーティーの準備に精を出すことにする。
他にもやらなくてはいけないことが山ほどある。
(そうだ、美容院も予約しなくちゃ!!)
久し振りにネイルサロンにだって行きたいでしょ?
2週間しかないけどダイエットにも挑戦してみようか……。
浮かれて無謀な計画を立てようとしたその時。
(なんか……胃がムカムカする……?)
……楽しい気分の水を差すような、不快な衝動に襲われた。
うっと口元を押さえるが、吐き気に耐えられずトイレに駆け込む。
「ゲホッ!!ゲホ!!」
咳き込みながら胃の中の物をあらかた吐き戻すと、洗面所で口をすすぎタオルで拭う。
(もしかして……)
カレンダーをめくりながら指を折って日付を数えると、やっぱり……と確信めいたものが頭をよぎる。
……先週くるはずの生理がまだきていない。
(妊……娠……?)
私は思わずお腹を押さえたのだった。