キミは甘のじゃく
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気まずい食事の時間を終えると、母親達はこぞって“あとは若いお二人で“なんて決まり文句で私達を半ば強引に庭に追いやった。
(この状況で何を話したらいいのよ……)
一切後ろを顧みない古賀くんにしずしずとついて行くしかなかった。
やがて、庭園を眺めるのに丁度良さそうな腰掛石が見えるとようやく一声掛けられる。
「座れよ」
……座って愛を語らおうとでもいうのだろうか?
なんとなく尻込みしていると、何を勘違いしたのか腰掛石の上にハンカチが敷かれた。
早く座れという意思表示に違いない。
気遣いを無駄にしないために仕方なく勧められるがまま隣に座る。もちろん庭園を眺める心の余裕などない。
私達二人の間に会話はないのに、木々を揺らす風ばかりがざわざわとうるさい。
(……気まずい)
……まさかこんな形で再会することになろうとは夢にも思わなかった。