キミは甘のじゃく
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2日後、精密検査に異常がなかった私は無事退院することが出来た。
「お世話になりました」
担当医師と看護師さんにお礼を言って、ひとり病室を後にする。
ひとりで大丈夫だからと家族の迎えは固辞して、辛うじて自尊心を保つことしかできない私は、なんて弱虫なんだろう。
病院を出てタクシー乗り場に降り立つと、運悪くタクシーはすべて出払っていて、今にも雪が降りそうな曇天の中、
辛抱強く待つことになった。
……さあ、これからどこに向かおうか。
私は今や自由気ままな独り身に戻ってしまった。
実家に戻っても、お父さんは何も言わないだろう。お母さんは何があったのかしつこく根掘り葉掘り尋ねてくるに違いない。
傷が乾ききっていない今はそれが少し辛い……。
事情を話せばかすみは助けてくれるだろうが、新婚家庭にお邪魔するのも心苦しい。
(暫くはホテル暮らしでもしようかな……)
落ち着いたら住むところを探そう。これを機に一人暮らしでも始めてみるのもいいかもしれない。
全部、忘れて……。何もなかったことにするの。
古賀くんと過ごしたあの日々も、彼に惹かれた自分の気持ちも。
(何もなかったことになんて出来るの……かな……?)
どこをどう間違えてしまったんだろう
あんなに大嫌いだったのに……。
……いつのまにか意地悪な彼がかけがえのない人になっていた。