キミは甘のじゃく
21.訳アリ結婚でも幸せになれますか?
助手席に乗りこむと、古賀くんが運転する車は直ちに発進した。
走り出して間もなく風景が変わり始め、背後にあった病院が次第に遠くなっていく。
“今日、仕事はどうしたの?”
“私が入院している間に開催された専務就任パーティーはどうなったの?”
聞きたいことは沢山あったのに何一つとして尋ねることが出来ず、しばしの間沈黙が流れる。
「私はどこに……帰るの……?実家?かすみのところ?」
どこにだって行くわと自嘲気味に笑う。
どこだって同じだ。どこだって私の居場所などないのだから。
「……お前が帰る場所はひとつしかないだろ」
古賀くんはそう言うと、当然のようにカーナビの目的地を一緒に暮らしてきたマンションに指定した。
……あそこに帰るの?
「止めて!!」
嫌だ!!それだけは嫌!!
あのマンションにだけは帰りたくない。
「今すぐ止めないとここから飛び降りるわ!!」
窓枠に手をかけて脅すと、車は私が望む通り急停車した。