キミは甘のじゃく
「お前は……逃げるほど俺が嫌いなのかよ……」
薄ら目を開けると古賀くんは力なくうな垂れ、途方に暮れたように目元を手で覆っていた。
普段のふてぶてしい様子からはとても想像できないほどに、弱り切っている。
「なあ、答えろ。俺はどこを直せばいい。どこを直せばお前に好きになってもらえる?」
「……古……賀……くん?」
「髪型か?目つきか?金はある方だが、まだ足りないか?」
「あ……の……」
「服でもバッグでも靴でも好きなものを買えよ」
借りてきた猫のようにおとなしくなりひたすら愛を請うその姿に、ぶっきらぼうの中にも誠意を示そうとしているのが分かる。
「……頼むから出て行くなんて言うな」
これではまるで……本気で私を引き止めたくて困っているみたいではないか。
「私……出て行くなんて言ってないけど……」
むしろ好きだから離れたくなくて困ってるんだけど……。
モジモジと指を弄びながら小声で呟くと、はあ?っと逆切れされる。
「さっき言ったじゃねえか!!帰りたくないって!!」
「あれは……!!マンションに帰ったら荷物ごと追い出されるって思ったからで……」
……何かがおかしい。
互いにそう思っているのがはっきりと見てとれる。