キミは甘のじゃく

どうにもこうにも妙な雰囲気になってきたので、私は話題を変えることにした。

「どうして、婚姻届を出さなかったの?」

「出さなかったんじゃない。出せなかったんだよ。お前の戸籍謄本、妹のやつと間違ってたぞ」

「え!?」

戸籍謄本が間違っていたなんて初耳である。

役所に行く時間がなくてお母さんに戸籍謄本の受け取りをお願いしていたのが仇となったのだろう。

同じ時期にかすみもパスポートを取ったりしてたから、私に渡すときにきっと封筒を取り違えたんだ……。

「でも、俺は逆にこれで良かったんだと思った」

「何で?」

「……お前の気が変わった時に困るかと思ったんだよ。俺と結婚したことをすぐ後悔して、逃げ出すんじゃないかって……」

「……本当は自分が困るからなんじゃないの?」

こんな意地悪を言いたくなるのは、散々いびられてきたせい?

「は?」

「自分こそ私と結婚したこと、後悔するって思ったんじゃないの?」

「後悔するわけねーだろ」

キョトンと首を傾げると、彼は声を荒らげて懇切丁寧に教えてくれた。

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