キミは甘のじゃく
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病院から帰るその足で区役所に婚姻届を出しに行った。
古賀くんは用意周到なことに、私の戸籍謄本をお父さんに頼んで取り寄せておいてもらっていた。
「いつでも出せるようにしておいた」
つまりその気になれば、古賀くんはいつでも婚姻届が出せたというわけで……。
私は最初から最後まで、彼の掌の上で転がされていたということになる。
婚姻届は今度こそ正式に受理されて、私達はその日のうちにめでたく本物の夫婦となった。
マンションに帰り誰にも邪魔されずひとしきり愛を確かめ合ったところで、古賀くんはこれまで封印していたという中学生時代のことをポツリポツリと語り出した。
「……初恋だった」
古賀くんは指で私の髪を梳きながら、時折チュっと頭の上にキスを落としてくれた。
「お前の視界に入りたくて……笑いかけて欲しくて……。上手く行かなくてフラストレーションばっかり溜って、ヤケになって傷つけた」
子供じみた嫉妬の炎がエスカレートしていったことを、古賀くんは正直に謝罪してくれた。
「よりにもよって市村なんかと噂になりやがって。クソが……」
そう言って独占欲を滲ませるように、ぎゅうっと抱きしめられる。