キミは甘のじゃく

「ほら、あそこですよ!!」

グイッと腕を引っ張られ、窓から通りを覗くとそこには見覚えのある影がひとつ。

昨日とは異なるグレーのスーツに身を包んだ彼は、しきりに腕時計と携帯の間に視線を彷徨わせていた。まるで、誰かを待っているかのようだ。

「こっ……」

(古賀くん!?)

衝撃のあまり持っていた資料をその場に取り落とす。

「大丈夫ですか!?」

「ごめん、ありがとう……」

仁美ちゃんに手伝ってもらい落ちた資料を集める間も心臓がバクバクと大きな音を立てる。

……昨日から心臓に悪いことばかりである。

(古賀くん……どうしてここに?)

「仁美ちゃん、悪いんだけどこの資料、私のデスクに置いといてくれる?」

「いいですよー」

「……ちょっと資料室まで行ってくるね」

見てしまった以上、放っておくわけにはいかない。

(もう~!!何でこんな目に遭うのよ!!)

無情な神様に悪態をつくと、エントランスまで一目散に駆け出したのだった。


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