キミは甘のじゃく

「その話はまた今度にしない……?」

「今度っていつだよ」

「それは……」

問い詰められてつい口ごもってしまう。

このまま返事を先送りにして、やんわり断ろうとしているのがバレている……。

「逃げられる前に捕まえとかねーとな」

……まるで私が逃げたことのあるような口調である。

どうやら、なにがしかの返答をするまではテコでも動かないと決めているようだ。

もうお手上げ。私は白旗挙げて降参した。

「この先に交差点にコーヒーショップがあるからそこで待っていてくれる?仕事が終わったら行くから」

仁美ちゃんのイケメンレーダーに引っかかるくらいだから、古賀くんが一人で立っているとそれだけで人目を引いてしまう。

会社前で待たれるよりはいくらかマシだろうと妥協案を示すと、古賀くんは名刺の裏にすらすらと電話番号を書いて私に渡してきた。

「逃げんなよ」

“逃げたら地の果てでも追いかけてやるからな”

……物騒な副音声がどこからともなく聞こえてきたのだった。

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