キミは甘のじゃく
5.結婚は計画的に
出来る限りの速さで仕事を終わらせ、約束のコーヒーショップへと向かうと、古賀くんはまるで待ちくたびれたとでも言いたげに頭をもたげた。
「……遅かったな」
……勝手にきたのはそっちじゃない。
文句を言ってやりたい気持ちをグッと堪え、古賀くんと対峙するように固い椅子に腰掛ける。
「それで?結婚するのか?しないのか?」
選択肢が極端すぎやしませんか……。
余裕たっぷりな仕草でコーヒーを啜るのは、断られないという自信があるせい?
引き攣った笑いしか出てこない。
「古賀くんがなぜ私と結婚をしたがっているのか理由がよくわからないんだけど……?」
単刀直入に切り込んだのはこれ以上振り回されたくないからである。
古賀くんはカップをテーブルに置いて、淡々と話し始めた。
「俺ん家が何の会社かは、さすがに知ってるよな?」
私はゆっくりと頷いた。
“古賀電機”といえば、誰でも知っている、エアコンや洗濯機といった白物家電を取り扱う大手の電機会社のひとつである。
そして、古賀くんは……。
古賀の名前を冠した大企業の御曹司様なのである。