キミは甘のじゃく
夢みたいなシンデレラストーリーを望んでいたわけはない。
強引なプロポーズもすべては後継者としての地位を得るため。
古賀くんは、彼にとって都合の良いキャストを求めているのだ。
「それなりの礼はする。だから俺と結婚しろ」
独りよがりとしか思えない主張に、呆れを通り越して怒りすら感じる。
(……これだからお坊ちゃまって)
即座に椅子から立ち上がり、冷え冷えとした目で彼を見下ろす。
「お断りします。他の人を探してくれる?」
ああ、もうバカバカしいにも程がある。プロポーズされて、本気で悩んでいた自分がバカみたいだ。
急ぎ足でコーヒーショップから出ると、会計を済ませた古賀くんが後から追いかけてくる。
「待てよ」
「……離して」
肩におかれた手を振り払うと、今度は強引に腕を引かれた。
「随分と可愛げのない女になったもんだな」
「こ、古賀くんには関係ないでしょう!?」
古賀くんに気に入られる必要は一ミリだってないのだから。
せめてもの反抗心を表すように視線を逸らすと、先日と同じように顎を掴まれた。
「お前に選択肢はないんだ。大人しく頷いとけよ。悪いようにはしない」
「簡単に頷けるわけないでしょう!?」
物を知らない幼稚園児じゃあるまいし。
何でもかんでもハイハイ頷くわけないでしょう!?
中学生だったあの頃とは違うんだから!!