キミは甘のじゃく
「別にお前の妹だっていいんだぞ?婚約を白紙にする方法なんていくらでもあるからな」
(か……すみを……?)
思わず正気を疑ってしまう。
目的を果たせるならかすみの幸せを潰しても構わないということ?
「このひとでなし!!」
かっとなって振り上げた手は降ろす前にパシッと空中で掴まれた。古賀くんは私の手を握ったままこう言った。
「明日も同じところで待ってる」
「待ってもらっても、行かない!!」
「いや、来るね。お前は妹を見捨てない。そういう奴だ」
確信があるのか余裕綽綽で言うと、古賀くんは私を解放して大通りを歩き去っていった。
(何なのよ……)
いじめっ子のくせに、プロポーズなんかして。私の性格を見透かすようなことまで言って。
(何なのよ……!!)
私は遠ざかっていく背中に向かって、ただただ声にならない罵声を浴びせることしかできなかった。