キミは甘のじゃく
何かにつけて要領の悪い私よりは器用で社交的なかすみならば、意に沿わない見合いもそつなく断ってくれるだろうと期待してのことだった。
かすみ本人も快諾し、ほどなく日取りも決まり、つつがなく準備は進んでいたそうだ。
しかし、そこで双葉くんの海外転勤が決定。
つかず離れずの距離を保っていた幼馴染二人は互いの想いをはっきりと自覚し、恋仲に。そして、あれよ、あれよ、という間に婚約。
困ったことにお見合い話だけが宙ぶらりんのまま残ってしまったということらしい。
「それで……お見合いの日はいつなの?」
「今週の日曜日よ」
「今週……!?」
卓上カレンダーで日数を数えてみれば、あと3日しかない。思いの外間近に迫っていた日付を聞いて、更に頭を抱えたくなった。これでは代わりを探す時間もないではないか。
「今更断れないわよ……」
お母さんは同情を誘うようにハンカチで涙を拭った。
「それはそうだけど……」
「あなた、彼氏とは別れたって言ってたでしょう?ね?お願い!!」
煮え切らない態度に業を煮やしたのか、お母さんは私の身体を左右にガクガクと揺さぶった。