キミは甘のじゃく
(私だって好きで付き合ってるわけじゃないんだから……!!)
もとを正せば父さんのせいなんだからね!?と力の限り訴える代わりにおかずを口に放り込んだ。
迂闊なことを話せば余計に事がややこしくなる。
お母さんがキッチンから聞き耳を立てているのが丸わかりである。
「いい男じゃないか、眞琴くんは。何が気に入らないんだ?」
「……全部」
そう答えるとお父さんは先ほどよりも大きな声で笑い出した。
「まあ、彼は坊ちゃまらしい傲慢なところがあるからな。未熟なところもあるが、彼が古賀電機の重役になったらきっと面白いぞ」
面白いという理由で、重役になられたら古賀電機で働く社員もたまったものじゃないだろう。
「それに、彼はまるっきり悪い人間という訳でもない」
「……知ってる」
ふうっと息をはいて、茶碗をテーブルに置く。食欲が途端に失せてしまった。
居心地の悪い思いをしたのは、これが初めてではない。
あの傍若無人の古賀くんが根っからの悪人ではないことを私は知っている。