キミは甘のじゃく
古賀家への挨拶が済むと、舞台は青山家へと移る。
「ささ、飲みなさい!!」
お父さんは缶ビールのプルタブを開けると、古賀くんのグラスになみなみとビールを注いだ。
「頂きます」
「まあ、良い飲みっぷりね!!」
お母さんは手を叩きながら大袈裟に褒め称える。
「もう、お父さん!!あんまり飲ませすぎないでよ?」
そう言っておつまみをお盆にのせて持ってくる間に、空き缶が3つも増えていた。
(この分だと、すぐ出来上がっちゃうだろうな……)
我が家の歓迎っぷりは古賀家のそれ以上である。
もともと、仕事上の付き合いもあったのか、古賀くんってばちゃっかりお父さんに気に入られている。
母さんは言わずもがな。学歴、容姿ともに申し分のない娘婿が出来て大張り切りである。
唯一、かすみだけが心配そうな表情を浮かべていた。
古賀くんが帰り宴会の片づけをしていると、結婚に賛成しているお母さんに見つからないようにこっそりと耳打ちをしてきた。
「本当にあの人と結婚つもりなの?」
「うん……そうみたい」
かすみの結婚を盾に脅迫されて半ば強引に押し進まれたなんて、とても本人には言えなかった。
「日和見主義のお姉ちゃんがこんなに早く結婚を決めるなんて、何かあったの?大丈夫?騙されてない?」
「……大丈夫。かすみは双葉くんのことだけ考えてればいいのよ」
そう言って心配するかすみをなだめると酔いつぶれてソファで寝始めたお父さんに毛布を掛けてあげたのだった。