キミは甘のじゃく

「帰ったぞ」

「おかえり。早かったね」

「ああ、近所だったからな」

すっかり心の余裕を取り戻した私は買ってきてもらったお弁当を一緒に食べ始めた。

「……何だよ?」

弁当をパクパクと口に運ぶ古賀くんを、ジイッと見ていたことを見咎められる。

「古賀くん、お金持ちなのにお弁当なんて食べるんだなあって思って……」

「……見てんじゃねーよ、ブス」

“ブス”と言われて表情がカチンと固まった。

その“ブス”と結婚しようとしているのはどこの誰よ!?

私は怒りを原動力にして猛然とご飯をかき込んだ。

(大体、古賀くんは昔から女性に対する配慮が足りないのよ!!)

彼は“ブス”と言われた私がどんな気持ちになるのか考えもしないのだ。

古賀くんの周りにはさぞや綺麗な女性がいるんでしょうよ。

それこそ、可愛くて、スタイルも良くて、古賀くんに身も心も捧げるという奇特な人もいたかもしれない。

(……謎だわ)

並みいる美人を差しおいて私が彼と結婚する事になるなんて。

……人生って本当に一寸先は闇だ。

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