キミは甘のじゃく
市村くんは真面目で誰にでも分け隔てなく優しく人望もある生徒だが、恋愛的に好きかと聞かれたら答えは否である。
この話の何に古賀くんが興味を示したのか謎だけど、とりあえず答えておく。
「私は別に……そんなつもりは……」
「お前みたいなブスが市村に好かれるなんて思ってんのかよ?」
あまりの暴言にしばしの間、硬直してしまった。
(……今、何て?)
「ブスのくせに色目使ってんじゃねーよ」
古賀くんにせせら笑われて初めて、バカにされていることに気がついた。
悔しさと屈辱のあまり、かあっと頬が熱くなった。
妹と比べたら大したことのない顔面というのは自分でも重々承知していた。
だからといって、面と向かってブスと言われて怒らないというわけではない。
「私が誰を好きになろうが古賀くんには関係ない!!」
辞書がたっぷり入ったカバンを古賀くんの顔面にお見舞いすると、私は泣きながら家路に着いたのだった。
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