キミは甘のじゃく
(うわあ……最悪……)
寝苦しさを感じてベッドから起き上がると、窓から朝日が燦々と降り注いてきて、余計気分が滅入った。
昔のことを夢に見るなんて……最悪な目覚めだった。
(まさかあの時“ブス”呼ばわりしてきた人と結婚することになんてね……)
隣でぐっすり寝こけている古賀くんの頬を憎々しく突く。
中学生の自分にこんな未来を告げたらきっと噴飯ものである。
事実は小説より奇なり。
悲しいかな、大人になっても古賀くんに逆らえなかったなんて。
*********
「おい、何か忘れてないか?」
「え?」
出勤する古賀くんを玄関まで見送りに行くと、出し抜けにそう言われて首を傾げる。
Yシャツにはアイロンをかけてあるし、ネクタイ、ハンカチといった小物だって先に渡しておいたはずである。
(あ、そうか!!)
「はい、どうぞ」
私は思い出したとばかりに、フックに引っ掛けてあった靴ベラを渡した。