キミは甘のじゃく
2.意外なお見合い相手
……花見日和のうららかな春の日のことである。
とうとう件の日曜日がやって来た。
「ごめんね、お姉ちゃん……」
かすみは申し訳なさそうにうな垂れながら、お見合いへと向かう私を見送りにやってきてくれた。
「いいってば。かすみは気にしないで。何とかうまくやって来るから」
かすみの代わりに袖を通した振袖はサイズこそぴったりだったが色合いが少し派手だった。
赤、黒、金の刺繍の煌びやかさにこちらが気後れしそうだ。
それでも文句は言えない。
可愛い妹のため。不肖ながら人見知りの姉も一肌脱ぎますとも。
「いってきます」
私はゆっくり玄関の戸を閉めると少しの不安と目一杯の勇気を手に、お母さんと一緒に迎えのタクシーに乗り込んだのだった。