キミは甘のじゃく
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かすみと双葉くんのアパートは電車で60分ほどの郊外の住宅街にある。
住所を頼りにたどり着いたのは1LDKの普通のアパートで、どこかホッとした。
身の丈に合わない暮らしはするものではないなと、ひとりごちる。
「いらっしゃい!!」
かすみは笑顔で出迎えると、私をリビングへと誘った。
「あ、さくらちゃん。いらっしゃい」
「お邪魔します」
リビングにお邪魔すると、ちょうど出掛ける支度をしていた双葉くんが軽く会釈をしてくる。
眼鏡をかけた中肉中背のこの男性こそ、かすみの婚約者の双葉くんである。
「今から出掛けるの?」
「転勤の準備があるんだ。僕のことは気にせずゆっくりしてってください」
双葉くんはそう言うとかすみに帰宅時間を伝え、私と入れ違いになるように出掛けて行った。
休日返上で準備とは大変である。
彼は大学で植物学の研究をしている大変優秀な学者だ。素晴らしいことに研究が認められ、3か月後には海外にある専門施設で働くことが決定している。もちろん、かすみも一緒に行く。
……かすみとこうして一緒に過ごせるのもあと少し。
双葉くんの言葉に甘えるように、私達は互いの近況やシュークリームを持ってきた経緯などを話し出したのだった。