キミは甘のじゃく
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到着した料亭ではお見合いにおあつらえ向きの個室が用意されていた。
先方はまだ到着しておらず、少しだけ緊張の糸が緩む。
(……うう、苦しい)
慣れない和服のせいで胸がぎゅうぎゅうと押し付けられて苦しい。
「早く帰りたいな……」
うっかりネガティブなことを口走ったがために、お母さんからきついひとひねりを頂戴した。
思わず漏れ出てきそうになった悲鳴を飲み込む。
(お見合いなんて興味ないのに……)
かすみのおめでたい話と入れ違いになるようにして、1年間付き合った彼氏と別れた。
破局に至るまでには色々あったけれど直接的な原因はありきたりなもので、彼氏の浮気によるものだった。
……いつもそうだ。
“つまらない”とか“飽きた”とか、まるで私に原因があるかのような物言いをされて、こっぴどく振られてしまう。
(そりゃあ……お世辞にも可愛いとは言えないだろうけどさ……)
いくら自覚していても、そう何度も同じような理由で男性に振られたらへこむ。
しばらくは独り身でいいかもと決心するには充分すぎる出来事であり。
願わくばお見合いの相手も私と同じような考えの男性でありますように祈らずにはいられなかった。